2026年3月30日スタートのNHK連続テレビ小説「風、薫る」。舞台は、文明開化の波が押し寄せ、社会のあらゆるものが塗り替えられていった激動の明治時代です。
まだ「看護」という仕事が世間に理解されていなかった時代に、境遇も性格もまるで異なる二人の女性が同じ養成所で出会い、ぶつかり合いながら「最強のバディ」へと成長していく——この記事では、物語のあらすじと舞台となる時代背景をわかりやすく解説します。
「風、薫る」公式あらすじ(全体)
明治18(1885)年、日本で初めて看護婦の養成所が誕生したのを皮切りに、次々と養成所が生まれました。そのうちの1つに、物語の主人公・一ノ瀬りんと大家直美は運命に誘われるように入所します。不運が重なり若くしてシングルマザーになったりん。生まれてすぐ親に捨てられ、教会で保護されて育った直美。手探りではじまった看護教育を受けながら、彼女たちは「看護とは何か?」「患者と向き合うとはどういうことか?」ということに向き合っていきます。
りんと直美は、鹿鳴館の華といわれた大山捨松(多部未華子)や商人・清水卯三郎(坂東彌十郎)らと出会い、明治の新しい風を感じながら”自分らしく幸せに生きること”を模索していきます。
養成所卒業後、二人は同じ帝都医大病院でトレインドナース(正規に訓練された看護師)としてデビュー。しかしりんは職場を追われ、直美はアメリカ留学直前に思わぬ出来事に巻き込まれ、ふたりは一度離れ離れになってしまいます。
やがてコレラや赤痢などの疫病が全国的に猛威をふるい始める中、再び手を取り合ったふたりは“最強のバディ”として疫病という大敵に立ち向かっていきます。(NHK公式情報より)
物語の流れを3段階で整理
第1章:養成所時代——出会いと「看護」への目覚め

※画像はイメージです
舞台は明治18(1885)年、東京の看護婦養成所。栃木から上京してきたりん(見上愛)と、東京で育った直美(上坂樹里)が入所し、それぞれ複雑な事情を抱えた同期生たちとともに近代看護を学んでいきます。
考え方も育ちもまるで違うふたりはぶつかり合いながらも、「患者のために何ができるか」という共通の問いに向き合うなかで少しずつ絆を深めていきます。鹿鳴館・明治社交界の人々との出会いも、ふたりの視野を大きく広げます。
第2章:病院時代——トレインドナースとしての奮闘と挫折

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養成所を卒業したりんと直美は帝都医大病院でトレインドナースとしてデビュー。院長(筒井道隆)、外科教授(古川雄大)、副院長(森田甘路)、ベテラン看病婦(仲間由紀恵)といった個性豊かな人物たちとぶつかりながら、まだ社会に認められていない「看護」という仕事の確立に奮闘します。
しかし順風満帆ではなく、りんは職場を追われ、直美も夢のアメリカ留学直前に思わぬ障壁に直面。ふたりはいったん別々の道を歩むことになります。
第3章:疫病との闘い——”最強のバディ”誕生
コレラ・赤痢の猛威が全国に広がるなか、ふたりは再び出会い、手を取り合います。離れて初めて気づいた互いへの信頼と、看護への使命感。物語では、明治日本を襲った感染症の嵐に正面から立ち向かうふたりの姿が描かれます。
3. 舞台となる場所

| 場所 | ドラマでの役割 |
|---|---|
| 栃木県那須地域(大田原市周辺) | りんの故郷。クランクイン地点 |
| 東京(本郷・上野周辺) | 看護婦養成所・帝都医大病院のある地区 |
| 鹿鳴館(東京・日比谷) | 明治社交界の場。大山捨松が活躍する舞台 |
| 各地の疫病流行地 | コレラ・赤痢との闘いの舞台 |
クランクインは2025年9月8日、栃木県大田原市の古刹・大雄寺(だいおうじ)で行われました。この大雄寺にはヒロインのモチーフである大関和のゆかりの場所があり、制作スタッフが縁を感じて選んだ撮影地です。
時代背景①:明治の「文明開化」とは
「風、薫る」の物語が始まる明治18(1885)年は、日本が猛スピードで西洋化を進めていた時代です。
明治維新(1868年)から約17年。江戸時代の武士社会・封建制度が解体され、西洋の技術・制度・文化が次々と取り入れられていきました。鉄道・電信・郵便・新聞・洋服・洋食——あらゆるものが急速に「和」から「洋」へと変わっていきます。
しかしその恩恵を受けられたのは主に上流階級や都市部に限られていました。りんの故郷・那須地域でのエピソードと上京後の東京のギャップには、「地方と都市の明治時代の温度差」が映し出されています。
時代背景②:「鹿鳴館時代」とは

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ドラマの重要な舞台のひとつが鹿鳴館です。
鹿鳴館は1883年(明治16年)11月に東京・日比谷に開館した、外国人接待と上流社交を目的とした洋風建築の施設。イギリス人建築家コンドルが設計した2階建てのレンガ造りで、毎夜のように舞踏会・園遊会・バザーが催されました。開館から1887年ごろまでの時期を「鹿鳴館時代」と呼びます。
なぜ鹿鳴館が建てられたのか
当時の日本最大の外交課題は、幕末に欧米と結んだ不平等条約の改正でした。「日本は文明国だ」と欧米に示すための欧化政策の象徴が鹿鳴館だったのです。しかし1887年に外務卿・井上馨が条約改正に失敗して失脚すると、欧化政策への批判が高まり、鹿鳴館時代は終わりを迎えます。
ドラマに登場する大山捨松(多部未華子)は鹿鳴館を代表する実在の人物。11歳でアメリカへ渡り11年間留学した後に帰国し、英語・西洋マナーが完璧な「鹿鳴館の華」として知られていました。
📺 連続テレビ小説【風、薫る】
— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) March 10, 2026
\前半の登場人物の役衣装をご紹介/
【鹿鳴館の華】
大山捨松 / #多部未華子#朝ドラ #風薫る#3月30日から放送スタート
👉ドラマの詳細は公式ホームページでチェックhttps://t.co/4juwkI25PE pic.twitter.com/T2OklAF0Jp
時代背景③:なぜ看護婦は「賤業」と呼ばれたのか
「風、薫る」の核心にある問題——それが「看護婦」という職業への社会的偏見です。
明治以前の日本では、病人の世話をするのは家族や「雑仕女(ぞうしめ)」と呼ばれる女性たち。汚物の処理・傷口の手当て・夜通しの付き添いなどを「体を使う汚い仕事」として社会的地位は低く、「賤業」と蔑まれることもありました。
この状況を変えようとしたのが、フローレンス・ナイチンゲールが確立した近代看護学です。日本では1885年(明治18年)に最初の近代的な看護婦養成所が誕生。ドラマの主人公たちはその第一世代にあたります。
「トレインドナース」とは

ドラマに繰り返し登場する「トレインドナース」とは、ナイチンゲール方式にもとづいて正規の訓練を受けた看護師のこと。英語の “trained nurse” の直訳です。仲間由紀恵演じるベテラン看病婦は、このトレインドナース制度以前から病院を支えてきた存在。新旧ふたつの看護観のぶつかり合いが、ドラマの見どころのひとつです。
時代背景④:コレラ・赤痢が猛威をふるった時代
物語のクライマックスに登場する疫病の大流行も、明治時代の重要な歴史的背景です。
明治時代の日本では、コレラが数年おきに大流行しました。特に明治12(1879)年は全国で約10万人、明治19(1886)年には1年間で15万人以上が死亡するほどの猛威でした。原因は生水・生魚・不衛生な環境で、当時は有効な治療法がなく、感染すれば死を覚悟する疫病でした。
この時代に近代看護が果たした役割は非常に大きなものでした。ナイチンゲール方式にもとづく排泄物の適切な処理・徹底した清掃と換気・患者の清潔保持が、感染拡大を防ぐうえで劇的な効果を発揮したのです。ヒロインのモチーフとなった大関和も、実際にコレラ・赤痢対策でその実力を発揮した看護師でした。
ドラマのタイトル「風、薫る」に込められた意味
制作統括の松園武大チーフプロデューサーは、タイトルについてこのように語っています。
「”風、薫る”という言葉は、花や草木の香りをまとった風が新緑の中を爽やかに駆け抜けるような様を表し、和歌や俳句などで古くから親しまれてきた言葉です。ドラマの主人公たちが、そういった風をたっぷりと受けて、やがて風のような存在となって人々に温もりを届けていく。視聴者の皆様にも、新鮮で心地の良い風をお届けしたいという思いを込めました」
また、主人公たちの人生における「向かい風」や「追い風」を経て、やがて心地よい「風」が「薫る」ようなドラマになれば、という思いも込められているとのこと。社会の逆風を受け続けたふたりが、やがて風のような存在となって患者に温もりを届けていく——タイトルはそのダイナミックな成長物語を象徴しています。
まとめ
「風、薫る」は、明治18(1885)年を起点に激動の時代を駆け抜けるふたりの女性の物語です。
- 文明開化・鹿鳴館時代という西洋化の波が押し寄せる時代
- 看護婦が「賤業」と蔑まれた時代に近代看護の道を切り拓くふたりの奮闘
- コレラ・赤痢の猛威という歴史的な疫病と闘うクライマックス
時代背景を知ったうえでドラマを観ると、りんと直美が壁にぶつかるたびに「この時代だからこそ」という重みが伝わってきます。2026年3月30日の放送開始が楽しみですね!
